キーガン・コールドウェルマーカス・ウォルター宮﨑貴大

日本は、様々な経済的要因により、M&A市場において魅力的な国となっています。日本円の価値下落は、海外投資家による日本の資産への投資をより活発にし、インバウンドM&Aを後押ししています。また、日本の堅調なGDP成長率は、日銀の緩やかな政策正常化及び低金利環境と相まって、経済の安定と投資家の信頼を高めていると評価できます。

近年のコーポレート・ガバナンス改革及び東京証券取引所による資本効率の改善重視の姿勢は、企業によるポートフォリオの最適化を促しており、市場では、戦略的買収・売却の機会がますます増大しつつあります。また、昨今、アクティビストが株式市場を賑わせておりますが、株主アクティビズムの高まりは、これまで評価されてこなかった企業の株式価値向上に貢献しております。このような背景から、M&Aが、企業の成長と事業再編のための戦略的手段としてますます有効になっていくと考えられます。また、よりマクロな経済情勢について言えば、日本の家計貯蓄の蓄積と予想される個人消費の増加は、国内市場の成長に明るい見通しをもたらしています。少子高齢化による人口動態の変化に伴い、依然として、国内では、経済展望について悲観的な見方が強いといえますが、海外投資家にとっては、日本は極めて魅力的な投資先となっています。

歴史的に低い政策金利及び、円安を特徴とする現在の日本のマーケット環境では、企業買収による資本構造の最適化と、企業買収にかかる総コストの削減を可能にする好条件を生み出しています。このような容易な資金調達環境下では、知的財産権を担保等とした融資の検討をおすすめいたします。

日本には、知的財産権に関する確立された信頼できる法的枠組みがあり、また、政府は知的財産の保護拡充をますます進めております。例えば、2024年施行の不正競争防止法等の一部を改正する法律案では、登録可能な商標の拡充、意匠登録手続の要件緩和、営業秘密・限定提供データの保護強化などの改正が行われましたが、これは、かかる知的財産の保護拡充の好例といえるでしょう。

日本の強力なエンフォースメント・メカニズム及び、国際的な知的財産基準の遵守は、担保として使用される知的財産資産が適切に保護され、執行可能であるという担保と保証を貸し手に提供します。日本企業は多くの場合、大量の特許、商標、その他の知的財産資産を保有しており、投資家に対して、知的財産がどのように事業価値を生み出すかを適切に示し、知財ポートフォリオを戦略的に構成することができさえすれば、バランスシートを大幅に強化し、資金調達の担保として利用することができます。

2021年6月改訂版のコーポレートガバナンス・コードでは、上場企業に対し、知財への投資について、自社の経営戦略・経営課題との整合性を意識しつつ分かりやすく具体的に情報を開示・提供するよう求めております。さらに、2025年4月から予定されているイノベーション拠点税制では、国内での研究・開発によって2024年4月以降に取得した特許や著作権で得られた所得の30%を、課税対象の所得から控除することとしております。このような政府による構造改革へのコミットメントは、国際的な投資家に対する日本の魅力と知的財産の全体的な収益化をさらに強化することでしょう。

コールドウェルでは、IP及びM&Aのスペシャリストが、企業の買主及び売主の双方に対して、技術主導のクロスボーダー取引を促進しています。我々は、日本の知的財産の大きな潜在的価値を解き放つ最近の法律・経済情勢は、日本の明るい未来につながっていると強く信じています。